梅雨明けの青空に湧き立つ真っ白な入道雲。本格的な夏が到来しました!岡山空港タクシー スタッフ・A子です。

さて、「吉備路」コラムの後編は、岡山市北西部エリア、吉備の国の中心地であり、立ち入ることのできる古墳としては日本最大の巨大古墳とその陪塚(近親者・従者の墓)から成る「造山古墳群」周辺にスポットをあて、さらに、日本三大稲荷の一つ「最上稲荷」や羽柴秀吉の水攻めの舞台となった「備中高松城址」など、近隣の多彩な史跡とその見どころも併せてご紹介します。

▼コンテンツ
~後編(岡山市エリア)~
■古代吉備の国の中心地「造山古墳群」周辺
・古墳巡りの拠点&学びの場「岡山市造山古墳ビジターセンター」
・全国4位の巨大古墳!吉備を支配した王の墓 国指定史跡「造山古墳」」
・築かれた当時の姿を復元した「千足古墳」(「造山古墳」の陪塚)
■吉備路のその他観光スポット(備中高松地域・一宮地域)
■造山古墳イベント情報

 

■古代吉備の国の中心地「造山古墳群」周辺

前編でご紹介した総社市の「作山古墳」の3kmほど東に、華やかに栄えた吉備文化を象徴する巨大古墳「造山古墳」(岡山市北区新庄下)があります。5世紀前半に築造され、岡山県で最大、全国で4番目、さらに自由に立ち入りできる古墳としては全国一の規模を誇る前方後円墳です。全長350m、墳丘の高さ30m・・・と数字だけ聞いてもイメージしづらいかもしれませんが、6基の陪塚を従え、何と、畿内の仁徳、応神、履中の3天皇陵に次ぐ規模だそうです。

 

・古墳巡りの拠点&学びの場「岡山市造山古墳ビジターセンター」

造山古墳のふもとに、古墳の情報発信と周辺の歴史・観光情報を集約した施設「岡山市造山古墳ビジターセンター」があります。古墳探訪の前に予習がてら、まずはそこを訪ねてみることにします。
田園風景の中、造山古墳駐車場が見えてきます。駐車場の敷地内にひときわ目を惹くモダンな外観の建物が現れます。

「岡山市造山古墳ビジターセンター」は、岡山市北区の加茂学区民とボランティアガイド(学区外の人も含む)で構成された「造山古墳蘇生会」が管理し、造山古墳とそれを構成文化財の一つとする『日本遺産「桃太郎伝説」の生まれたまち おかやま~古代吉備の遺産が誘う鬼退治の物語~』についての情報発信、さらに造山古墳周辺の広域周遊観光の情報を提供し,吉備路の魅力を発信する観光施設です。


岡山市公式観光情報サイト(OKAYAMA KANKO.net)より引用
「桃太郎伝説」の生まれたまち おかやま~古代吉備の遺産が誘う鬼退治の物語~
いにしえに吉備と呼ばれた岡山。この地には吉備津彦命(きびつひこのみこと)による温羅(うら)と呼ばれた鬼を退治した伝説が語り継がれ、昔話桃太郎の原型になったとされています。伝説では、絶壁にそびえる古代山城は温羅の居城とされ、約1,800年前の巨大墓に立ち並ぶ巨石は命(みこと)の楯(たて)となりました。戦いの後、勝利した命は巨大神殿に祀られ、敗れた温羅の首はその側に埋められ、この地で吉凶を占っています。
鬼退治伝説は古代吉備の繁栄と屈服の歴史を背景として生み出され、伝説の舞台となった吉備の多様な遺産は、今も訪れる人々を神秘的な物語へと誘ってくれます。


館内では、造山古墳の成り立ちや構造、造山古墳に眠る王者についての考察(岡山市説)、古墳が造られた「古代吉備国」の歴史や、周辺の観光施設などをパネルで紹介しています。

ガラス窓からは、造山古墳が一望できます。

『日本遺産「桃太郎伝説」の生まれたまち おかやま~古代吉備の遺産が誘う鬼退治の物語~』についての解説映像などが、上映されています。

造山古墳蘇生会の方々が製作した円筒埴輪のレプリカも展示されています。
古墳の墳丘の平坦面や周囲には、多くの円筒埴輪や形象埴輪が立て並べられていたそうです。

古墳の発掘・復元について取り上げた新聞記事なども展示されており、思わず時間を忘れて見入ってしまいます。

とりわけ、造山古墳に眠る王者についての考察(岡山市説)は、大変興味深いものがありました。造山古墳には吉備の王が葬られており、その巨大古墳のもつ意味は、大和の大王に匹敵する勢力を保持した大首長が吉備に君臨したこと、そして畿内の大王家と、倭国をまとめるうえで、融和・協力し、深い関係にあったことを物語っているそうです。

広い駐車場には、清潔できれいなトイレや自動販売機も設置されており、古墳巡りの時の駐車スペースだけでなく、休憩スポットとしても活用できます。また、敷地内にある、ユニークな石碑や銅像、オブジェも必見!造山古墳を背景に、存在感を放っています。
石碑の右の黄金像は、吉備路にアトリエを構える彫刻家・西平孝史氏作の「吉備の大王」。傍には埴輪が。

石碑の左には、同じく西平氏作の「直弧文入り石障復刻オブジェ」があります。陪塚とされる「千足古墳」(造山第5号墳)の横穴式石室(遺体を収める埋葬施設)内にあった直弧文の刻まれた「石障」(仕切石)を復刻したものです。美しい浮き彫りを、いつでも誰でも鑑賞できるように公開されています。
(※直弧文とは、直線と弧線を複雑に組み合わせて構成される、古墳時代の美しい文様。)

造山古墳蘇生会の方々のおもてなしの心が隅々にまで感じられ、温かい気持ちになります。
古墳巡りの前に、すでに観光気分を十分に満喫した感じなのですが、敷地内の案内板で再度予習をして、いよいよ「造山古墳」に向かいます。

「岡山市造山古墳ビジターセンター」(岡山市公式観光情報サイト)の詳細はこちら
https://okayama-kanko.net/sightseeing/spot/560/

 

・全国4位の巨大古墳!吉備を支配した王の墓 国指定史跡「造山古墳」

ビジターセンターから直進し、東中央部の登り口から「造山古墳」を登っていきます。墳丘は三段築成で、全長350m、前方部の高さ25.5m。後円部の高さ30m。体力にはあまり自信がないのですが、階段が整備され手すりもついているので、想像よりも登りやすそうです。

南の前方部にも登り口があります。

前方部頂上南側にひっそりと鎮座する「荒神社」。神秘的な雰囲気が漂っています。

古墳巡りの安全を祈ってお参りしました。

拝殿横には石をくりぬいた石棺の身が置かれています。石室の蓋石には「千足古墳」の石室でも見られる「直弧文」が描かれています。

少し離れた社の裏手には石棺の蓋石が残されています。

この石棺は造山古墳の北にあった新庄車塚古墳から運ばれた説と造山古墳の前方部から出土した説があり、石材は熊本県宇土半島から産出する「馬門石(まかどいし)」という阿蘇の凝灰岩(阿蘇山噴火の熱泥流が溶けて固まったもの)で、吉備と九州との密接な関係を示しています。

石棺蓋。写真では見づらいですが、表面に直弧文が描かれ、内面には赤色顔料が塗られています。

いよいよ後円部へ。こんもりと盛り上がっています。頂上へ登っていきます。

後円部頂上の円形広場に到着!広大で平坦な草地になっています。これは羽柴秀吉の毛利攻めに備えて、毛利方がここに陣地を築き、頂上を平らにしたためといわれています。

岡山市教育委員会の発掘調査では、墳頂から古墳時代の板状の5つの石が発見されています。香川県の安山岩製で、埋葬施設の一部である可能性があるそうです。また、北側の墳丘テラスから埴輪列や葺石が見つかりました。築造当時、古墳の斜面は葺石で覆われ、3段に築成された各段には円筒埴輪がおびただしく並び、頂上にもいろいろな形象埴輪が並んでいたといわれています。謎多き古墳の構造の解明は今後も続いていくことでしょう。

頂きから田園風景を見下ろす大パノラマ。写真ではわかりづらいですが、彼方には日本三大稲荷のひとつ「最上稲荷」の大鳥居が見えます。心も晴れ清々しい気持ちに包まれます。

後円部より古墳中央部を望みます。中央に植えられているのは桜並木。春には、何と古墳の上でお花見散策ができます。

実際に頂上まで登ってみて、その雄大さをあらためて実感しました。
仁徳、応神、履中の3帝陵は、造山古墳の築造時期(5世紀前半)にはまだ存在していなかった可能性があるので、この古墳が作られた当時、造山古墳は日本で最大の古墳だったかもしれません。この古墳に眠る吉備の大王とは一体どのような人物だったのか?墳丘の大きさから考えても、吉備という一地域の王にとどまらず、日本全体の支配者(倭国の大王)だったのではないか?などなど、その興味は尽きません。

「造山古墳」(岡山市公式観光情報サイト)の詳細はこちら
https://okayama-kanko.net/sightseeing/spot/573/

 

・築かれた当時の姿を復元した「千足古墳」(造山古墳の陪塚)

造山古墳の西側一帯に築かれた中小規模の6基の陪塚。造営はいずれも古墳時代中期(5世紀前半~半ば)で、造山古墳の主に仕える近臣や家族が眠る墓だと考えられています。

造山古墳の南西に築かれた5号墳「千足古墳」は、6基の中で最も大きい墳長約81mの前方後円墳で、前方部が短いので「帆立貝形古墳」とも呼ばれるそうです。香川県から運ばれてきた石材で石室を築き,熊本県から運ばれてきた石材で内側を囲む石障が設置されています。

後円部中央の横穴式石室内に「直弧文」を刻んだ石障がありますが、2009年、石障の直弧文が大きく損傷していることが明らかになったため「岡山市埋蔵文化財センター」で保存されることになりました。それに合わせて岡山市教育委員会による復元・整備事業が行われ、14年の歳月を経て昨年2023年4月に全面公開されました。

埴輪列と墳丘が復元され、石室の見学通路も設置されました。
約1,600年前に築かれた当時のままの古墳を体感できます!

墳丘上から撮影。円形の後円部と四角い前方部から成っているのがよくわかります。

2010年~2014年の発掘調査で、古墳の形に添って掘られた溝が見つかり、埴輪片が発見されました。そのため、前方部に復元された円筒形の埴輪を配置しています。

築造当時の姿の再現は、実に見事です。朝一番だったこともあり見学者は私一人で、静けさの中、自分が古代人になったような、古代の人々に出会えるではないかという錯覚に陥る別世界の空間が広がります。

裾部にも埴輪が並べられています。左向こうに見えている森が造山古墳です。

後円部の頂上にも登れます。後円部を取り囲むように、円筒埴輪のレプリカも並べられています。後円部には2つの石室があり、頂上には石室の位置が地面にペイントされています。

円筒埴輪の他に、家形埴輪や、身分の高い人に差し掛ける傘を模した蓋形埴輪(きぬがさがたはにわ)も出土。発掘された場所に展示されています。

左が蓋形埴輪、右が家形埴輪です。

そして、今回の復元・整備事業の中で、最も注目されるのは、後円部内部の2つの石室のうち、第1石室を見学できることです。墳丘の側面に入口があります。

奥に進むと、石室内部は、ガラス越しに観察できます。
ひんやりとした空気の中、時が止まったような、神秘的な雰囲気に包まれます。

玄室(死者を埋葬する墓室)の壁に穴が空いていて、下に玄室を覗くように内部を見ることができます。まるで別世界にワープしたような不思議な感覚を味わいます。


石室の内部の白い部分が石障(仕切石)で、熊本県から運ばれた石(天草砂石)に直弧文の文様が刻まれています。
(実物の仕切石は「岡山市埋蔵文化財センター」で保存されており、毎年期間限定で公開されています。)
レプリカではあっても、直弧文の美しい文様を目にすることができるのは、心が高鳴ります。
(※前述の造山古墳ビジターセンターの敷地に、これを復刻したオブジェがありましたね。)

石室の壁には香川県でとれた安山岩、石障には熊本県でとれた石が運ばれるなど、石室作りには西日本全体が関わっており、当時の吉備が広い地域と交流し隆盛を極めていたことを物語っています。

造山古墳と千足古墳をはじめとする周辺の古墳群は、中国自然歩道の吉備路ルートに従って回ることができます。
青い空と緑の山々を背景にした壮大なパノラマの古墳景観。その頂きに立てば、昔日の威容や人々の思い、古墳造りのエネルギーを想像することができます。
古代吉備のロマンに思いを馳せながら、大人の遠足気分で体感型古墳探訪はいかがでしょうか?

「千足古墳」(岡山市公式観光情報サイト)の詳細はこちら
https://okayama-kanko.net/sightseeing/spot/3051/

 

■吉備路のその他観光スポット(備中高松地域・一宮地域)

「造山古墳群」周辺には、見どころがまだまだあって、紹介しきれませんが、その他の観光スポットを簡単に記します。

・「備中高松城址」(岡山市北区高松)
戦国武将・清水宗治の居城で、戦国時代の典型的な平城跡。秀吉軍と毛利軍が戦った「高松城水攻め」の舞台となったことでも有名です。現在、本丸と二の丸は公園として整備され、市民の憩いの場となっています。清水宗治の首塚と辞世の句を刻んだ歌碑が建ち、歴史ファンも多く訪れます。

「備中高松城址」(岡山市公式観光情報サイト)の詳細はこちら
https://okayama-kanko.net/sightseeing/spot/589/


・「最上稲荷」(岡山市北区高松稲荷)
伏見・豊川に並ぶ日本三大稲荷の一つとして知られる祈祷の名刹。岡山県内で唯一、明治維新の廃仏毀釈の被害を逃れ、寺院でありながら鳥居があり、本殿は神宮形式という「神仏習合」形態の貴重な霊地です。商売繁盛・家内安全・五穀豊穣などのご利益を求めて訪れる岡山県屈指の参拝スポットです。

「最上稲荷」(岡山市公式観光情報サイト)の詳細はこちら
https://okayama-kanko.net/sightseeing/spot/104/


・「吉備津神社」(岡山市北区吉備津)

昔話「桃太郎」(鬼退治)の原型となった「大吉備津彦大神」が祭神で、吉備氏一族も祀られています。仁徳天皇が大吉備津彦大神の功績を称え創建されたと言われ、三備(備前、備中、備後)の一宮(各国の中で最も格式の高い神社)として信仰をあつめています。本殿および拝殿は、「比翼入母屋造(ひよくいりもやづくり)」という独特の屋根が特徴の優美な建築様式で、「吉備津造り」とも呼ばれ国宝に指定されています。また本殿から続く約400mの美しい回廊(岡山県指定文化財)も、回廊沿いの季節の花とともに一見の価値があります。

「吉備津神社」(岡山市公式観光情報サイト)の詳細はこちら
https://okayama-kanko.net/sightseeing/spot/102/


・「吉備津彦神社」(岡山市北区一宮)
吉備津神社と同様に、桃太郎伝説のモデルとなり、大和朝廷の命により吉備国を平定したと伝えられる「大吉備津彦命」を祀る神社。別名で「備前一宮」とも呼ばれ、吉備国が備前、備中、備後、美作に分かれた後、備前国の総氏神としてあつく信仰されてきました。社殿の美しさでも知られ、本殿は岡山県の重要文化財に指定されています。境内には吉備の国に製鉄技術などをもたらした温羅(うら)も祀られています。

「吉備津彦神社」(岡山市公式観光情報サイト)の詳細はこちら
https://okayama-kanko.net/sightseeing/spot/570/

 

■造山古墳イベント情報

8/11(日)~9/23(月・振休)の間の日曜日及び祝日・振替休日に「岡山市造山古墳ビジターセンター」駐車場にて、「造山古墳マルシェ」が開催されます。
地元生産者による産地直売やキッチンカーの出店、ストリートミュージシャンによるライブを開催。古墳見学とともに楽しめます!

 (※終了しました)

「造山古墳マルシェ」開催日時
2024年 8月 11日、12日、18日、25日
2024年 9月 1日、8日、15日、16日、22日、23日
10:00~15:00
開催場所 「岡山市造山古墳ビジターセンター」駐車場
※入場無料


イベントチラシ(PDF)はこちら

イベントの詳細(岡山市公式観光情報サイト)はこちら
https://okayama-kanko.net/sightseeing/event/6873/

特別協力:岡山市観光振興課
岡山市教育委員会文化財課
造山古墳蘇生会
岡山市埋蔵文化財センター
(記事作成にあたり、ご協力いただきました。)

岡山市公式観光情報サイト
https://okayama-kanko.net/sightseeing/

岡山空港から造山古墳までのタクシー所要時間と運賃

所要時間:約25分
料金:普通タクシー   約5,190円
   ジャンボタクシー 約7,460円

※当日の交通状況により多少前後しますので、ご了承ください。

※掲載の情報は2024年7月30日現在のものです。